耳のよくある症状

下記のような耳症状が出ましたら当院にお気軽にご相談ください。

耳が痛い

外耳炎、鼓膜炎、急性中耳炎などにより耳の痛みが生じることがあります。特に強い痛みを感じる疾患として、水痘帯状疱疹ウイルスによる感染が起こることがあります。その場合、のちに顔面神経の麻痺（目がつむりにくくなる、口が曲がったような症状を呈する、めまいを併発する）を引き起こすことがありますので注意が必要となります。

耳がかゆい

外耳道に湿疹を起こすことがあります。気になって触ってしまうことでひどい外耳炎を起こすなど痛みの原因となることもあるので早期に治療を行うことが望ましいです。

耳が聞こえにくい（難聴）

耳というのは大きく、外耳、中耳、内耳に分けられます。外耳は耳の入り口から鼓膜までを言い、主な役割としては、外から入る音を中耳へ伝達します。中耳は、鼓膜や鼓室、耳小骨などで構成され、外耳道から入ってきた音を鼓膜が振動することで内耳に伝達します。内耳は、耳の最深部の頭蓋骨内にあり、蝸牛や三半規管、蝸牛神経などで構成されています。蝸牛では振動を電気信号に変換し、蝸牛神経を通して脳に音として伝達されます。
音は外耳→中耳→内耳→脳へと伝わっていき、そのいずれかに問題があることで難聴が起こります。
難聴の原因はさまざまで突然耳が聞こえにくくなるもの、年齢とともに徐々に聞こえが悪くなってくるものなど発症する状況についても様々です。特に突然耳が聞こえにくくなる疾患としては突発性難聴やメニエール病などの可能性も否定はできず、早期の治療が必要になるケースがあります。できるだけ早く受診することで改善することもありますので、あまり後回しにはせず早めの受診をお勧めします。難聴になるとさまざまな社会生活に支障をきたすことが知られ、家族や友人とのコミュニケーションがうまくいかないことで自信をなくし、社会的な孤立から鬱症状に陥ることもあり、また難聴に伴い認知症の発症リスクを大きくすることも知られています。
また難聴については特に小児のお子様の場合、難聴をできる限り早く気づいてあげることはその後の成長においても非常に重要です。早期に対応することで言語発達の遅れなどを防ぐことも期待はできるため、音への反応などをよく観察してみてあげることが重要です。
（当院では小児の聴力検査で限界があるため、必要に応じて専門施設にご紹介させていただくこととなりますのでご了承下さい。）

耳鳴りがする

周りが静かなところに行くと、「キーン」という高音や「ジー」のような音が鳴って、耳から離れないということがあります。耳鳴りの原因は実はわかっていない部分（過労やストレス、加齢性変化、心理的な素因なども言われています）が多く、治療に難渋するケースも多くあります。ただ急性期の耳鳴りは実は隠れ難聴が原因で起こっている場合などもあり聴力検査などは一度きちんと検査しておくことをお勧めします。

耳が詰まる感じがする

耳閉感とも言われ、聞こえづらさを自覚するケースもあります。外耳道に物理的に閉塞がある場合（耳垢塞栓や外耳道異物など）、中耳腔に水が溜まってしまう場合（滲出性中耳炎）、耳の聞こえが悪くなっても耳閉感を呈することがあり、原因となっている疾患を確認することが望ましいです。

めまい、ふらつきがみられる

耳は聞こえに関わる器官であることはもちろん、平衡感覚を保つ器官でもあります。
半規管は、平衡感覚を保つのに必要な器官で、ここには3つの半規管があり、これらにはリンパ液が入っていて、身体が回転するなどした場合、方向に合わせてリンパ液が流れます。この流れ方によって、人間は身体が回転していることを認識できるようになります。
自覚症状としては周囲がぐるぐる回っている「回転性めまい」と身体が揺れて、ふわふわするような感覚を呈する浮遊感を覚える「非回転性めまい」があります。めまいの原因として最も多いのは実は耳が原因のめまいになります。多くの方はめまいは頭の中の問題と捉える方が多いです（もちろんめまいで最も怖いのは頭蓋内の病変であり精査することは必要です、当院で頭部CT、MRIの検査はできないため脳外科への受診が必要となります）が、耳からくるめまいをよく理解し、耳性めまいを治療していくことが必要と考えます。

耳でよくみられる病気

急性中耳炎

中耳の部分に炎症が起きている状態で、乳幼児や風邪・アレルギーの患者様がよく発症します。主に鼻と耳をつなぐ器官（耳管）から風邪の原因であるウイルスや細菌などの病原体が中耳へと入り込み感染することで炎症が起きるとされています。特に小児では、発達途上の段階となり、耳管が太くて短く、成人のように傾斜しておらず、ほぼ水平なため、これが風邪を引くなどした場合に病原体（細菌、ウイルス など）が鼻から耳管を通じて、鼓室（中耳）へと侵入することによって発症します。この状態が急性中耳炎です。

こんな症状に心当たりがあればご相談ください

  • 耳が痛い
  • 耳の詰まりを感じ、聞こえにくい
  • 不機嫌になる（乳幼児の場合）
  • 耳を触り気にしている、耳に手を当てて泣く（乳幼児の場合）
  • 耳だれがある　など

予防

急性中耳炎の多くは鼻水を通して病原体が耳管を通して中耳に入ることで発症します。鼻水を啜（すす）ったりはせずに、こまめに鼻をかむことで予防ができます。小さなお子様の場合はうまく鼻かみができないことも多いので、市販の吸引機などを用いて鼻を吸ってあげることも重要です。ただ、市販のものでは処置に限界もあるため、難しいようであれば、気軽に当院を受診いただけましたら、鼻の中の所見を確認し必要な鼻処置を実施させていただきます。

治療方法

症状の程度によって内容が異なります。軽症であれば、4日間程度の経過観察になりますが、それでも改善しない場合、悪化する場合、また初診時に中等症以上ということであれば、抗菌薬を投与します。また重症化している場合は、鼓膜を切開します。切開することにより、中耳腔内煮ある細菌を減らし抗菌薬の効果をあげることができます。多くの場合、感染が落ち着いたのち鼓膜の穴（鼓膜穿孔）は数日で閉鎖します。

滲出性中耳炎

中耳（鼓室内）に液体（貯留液）が溜まっている状態が滲出性中耳炎です。小児では急性中耳炎が長引き発症することがあります。そのほか、鼻炎や副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎などをきっかけとして発症します。急性中耳炎とは異なり痛みを伴うことが少なく、自覚的には耳の聞こえにくさや耳の詰まり感のみとなります。小児期の難聴の長期化は言語発達などにも影響を及ぼす可能性もあり、周囲が気付きにくい部分でもあるため、十分な観察がのぞましいと考えます。
また成人の滲出性中耳炎で、蔓延してしまう場合、上咽頭（咽頭の上部で鼻と喉の間）に病変があるケースも多く、上咽頭がんを発症している可能性も考えられます。当院では鼻腔fiber（内視鏡）を用いて、病変がないかの確認を行います。ご相談ください。

こんな症状に心当たりがあればご相談ください

  • 耳が聞こえにくい
  • 耳が詰まり　など

治療方法

発症の原因とされる病気がある場合は、それに対する治療を行います。それでも改善の見込みがないと医師が判断した場合は、鼓膜を切開し膿を吸引して治療し、複数回に渡って切開の必要がある場合は、鼓膜換気チューブ留置術を検討致します。

真珠腫性中耳炎

鼓膜の一部分（角化といって硬くなった皮膚）が中耳側に入り込み、中耳内に真珠腫という固まりが形成された状態です。進行することで耳小骨などの周囲の骨組織を破壊し、さらに真珠腫の細菌感染が起きることで病状が進行すると、より重篤な合併症が引き起こされる場合もあります。
発症の原因についてはわかっていないことも多いですが、先天性（生まれつきのもの）と後天性（出生後に生じる）に分けられます。真珠種は骨破壊を起こして進行するため、進行すると顔面神経麻痺（顔の動きが悪くなる、左右差が出る）、味覚障害を呈する場合もありますので早期発見し治療を行っていくことが重要です。

こんな症状に心当たりがあればご相談ください

  • 悪臭を伴う耳垂れがする（時に出血も伴う）
  • 耳に強い痛みを感じる
  • 耳が聞こえにくくなる　など

治療方法

進行の度合いにもよりますが、薬物治療の効果が乏しいため、基本的には手術療法で真珠腫を取り除きます。当院での手術対応は困難なため、連携のある施設で手術可能な施設へご紹介をさせていただくことになります。

外耳炎（外耳道炎）

外耳もしくは外耳道（耳の穴）で炎症が起きている状態を外耳炎（外耳道炎）といいます。原因として最も多いのが、耳かきや自身で耳を触っていまい外耳道が損傷するケースで、水が入るなどして細菌に感染することで炎症を起こすこともあります。

こんな症状に心当たりがあればご相談ください

  • 耳が痛い
  • 耳がかゆい
  • 耳垂れが出る
  • 耳の発赤・湿疹　など

治療方法

抗菌薬の点耳や軟膏の塗布を行います。ただし、原因として耳かきなど耳を触ってしまうことで発症することが多く、気になってはしまうと思いますが、治療している最中でもやはり耳を触ってしまうと、点耳を続けても症状が改善しないことが多くあります。辛いですが、なにより触らない、気にしないことを意識しましょう。

耳管開放症

耳管は耳と鼻を繋ぐ管のことです。新幹線などで耳にキーンと違和感がある際や水中で耳抜きをすることで耳の違和感が取れることがあると思います。というのは耳抜きや嚥下により耳管を閉塞させることでその症状を緩和しているのですが、本疾患の場合、その機能がうまく行えずに耳管が開きっぱなしになっている状態です。自覚症状としては、耳が詰まったり（耳閉感）、自分の声が頭に響くような感覚があります。
横になったり、深くお辞儀をすることで症状が改善することがあり診断の一因となります。また耳鼻科での診察で鼓膜の動揺（呼吸や嚥下に合わせて鼓膜が動くことが観察されることがあります）を確認することができます。

突発性難聴

突発的に左右いずれかの耳が突然聞こえなくなる難聴です、症状が軽度の場合、耳鳴りや耳閉感、突然の耳鳴りで発症することもあります。原因は特定されていませんが、内耳にある蝸牛に血液が十分に流れない、ウイルスによる感染などが考えられています。壮年期の比較的幅広い世代に発症しやすいとされて男女差はありません。早期の治療が必要な疾患で、遅くとも発症2週間以内の治療が望まれます。合併症によってはクリニックなどでは治療が難しいケースもあるため、大きな病院での入院治療を要する場合もあります。いずれにせよ早期に受診し診断をつけることが重要です。

こんな症状に心当たりがあればご相談ください

  • 片側の耳が聞こえにくい
  • めまい
  • 嘔吐・吐き気
  • 耳鳴り
  • 耳閉塞感　など

治療方法

早期治療が非常に重要です。治療が遅れることにより聴力の回復が難しくなります。内容としては薬物療法ですが、中でも有用なのがステロイド薬です。またビタミン剤やATP製剤、血管拡張薬などを併用する場合もあります。
上記の治療を行うことにより治癒するのは全体の3分の1程度の患者様で、あとの約3分の1の患者様は部分的に回復します。また上記以外の3分の1ほどの患者様は回復することは難しいのが現状です。
発症に気づいてから遅くとも10日以内に当院までご相談ください。

加齢性難聴

加齢に伴う聴覚系の細胞機能が低下することにより起こります。基本的に高音領域から傷害されるため、高い音を中心に聞き取りづらさが増してきます。環境による個人差も大きくはなりますが、難聴が進行することで、家族や友人とのコミュニケーションがうまくいかず自信をなくし、社会的な孤立から鬱症状に陥ることなども知られています。また難聴に伴い認知症の発症リスクが大きくなるとも言われています。

治療方法

補聴器の装着を検討します。ただし眼鏡などとは異なり、合う合わないなど個人差もあるため、また補聴器自体も高額な買い物となるため、その購入についてはよく検討が必要と考えます。また周囲の人の協力も重要で大きな声で話してあげることなどでストレスは緩和されるので周囲と協力しながら対応することが重要です。