舌下免疫療法とは
免疫療法はアレルギーの自然経過を唯一改善させうる治療と定義されています。難しい言い方になっていますが、唯一寛解(完治)を望めるアレルギーの治療となります。
日本では2014年にスギ花粉症舌下免疫療法が、2015年にダニアレルギー舌下免疫療法が保険適応となり、現在までには小児へもその治療適応が広がっています。舌下免疫療法は安全性も高く、痛みの伴う治療ではないため、小児にも実施しやすい治療と考えられています。
ただし治療には3年以上の継続処方が必要で根気強い治療の継続が必要となります。院長はこの治療期間を短くさせるため、アジュバント(薬剤とともに投与することで治療効果を早め、治療期間を短縮させる製剤)を用いた研究を行っていました(現時点でヒトへの治療は実施されてはいません。)(Suzuki,S. Sublingual administration of liposomes enclosing alpha-galactosylceramide as an effective adjuvant of allergen immunotherapy in a murine model of allergic rhinitis. Allergology International, 2019. 68(3): p. 352-362.)
治療について
治療はアレルギーの原因物質を含んだ薬剤(スギ舌下錠もしくはダニ舌下錠)を1日1回舌の裏に1〜2分間保持しその後に飲み込むことになります。現在治療は5歳以上が対象となりますが治療期間は3~5年と長期間に及びます。(途中で離脱した場合は症状が再燃しやすいなどのリスクがあります)
またスギ花粉に対する舌下免疫療法の治療開始時期は花粉飛散の少ない6月から11月の実施となります。(ダニアレルギーの開始時期は一年中いつでも可能です)
舌下免疫療法のメリットとしては家庭で治療を続けられ、注射などの痛みを伴う処置が必要とならない点になります。また一方で、治療期間が長期におよび、連日の薬剤投与が必要となります。さらに効果が得られない症例も20%程度指摘されており、すべての患者様に十分な効果が得られない可能性は理解しておく必要があります。
舌下免疫療法が受けられない方
下記に当てはまる方は、舌下免疫療法を行うことができません。
- 5歳未満、または65歳以上の方
- 1ヵ月に1回、ご本人が受診することが難しい方
- 気管支喘息の方
- 1ヵ月以内に抜歯した、もしくは口内炎などの症状がある方
- 悪性腫瘍、または免疫系の病気(自己免疫疾患など)がある方
- 重症の心疾患、肺疾患及び高血圧症がある方
- 妊娠中の方(近く妊娠を希望されている方)
- 全身ステロイド薬を内服もしくは注射薬投与を受けている方
- 対象以外のアレルゲンに対しても反応性が高い方
- 非選択的β遮断薬、三環系抗うつ薬、モノアミンオキシダーゼ阻害薬(MAOIなど)を服用中の方